お化け屋敷での思い出

今を去ること20年前、幼稚園児だった私は、お化け屋敷に一人で入れもしないくせに、
「あのっ、怖いので一緒に入ってください!」
と、最後尾のカップルに頼んで連れていってもらった。

彼はにこにこしながら、私を彼女との間に挟んでくれ、彼女も「怖いねー」と言って気を遣ってくれた。
優しいお姉さんとお兄さんだったが、
出てきてから母親(←やはり怖くて行きたくなかった)に
「今のアベックでしょ。あんた、邪魔しちゃダメでしょ!」
と怒られた。

きっと彼女だって、彼の前で「怖いわ」と震えてみたかっただろう。
彼も彼女を爽やかにエスコートし、男をあげたかったことだろう。

あの二人は今、穏やかで仲睦まじい夫婦になっていてほしいと思う。