先生の体罰

「日本の教育現場も捨てたもんじゃない」
「教師の中の教師だ」-。

体罰をして辞表を出した京都府京丹後市の市立小学校の男性教諭(28)が、
辞職撤回を求める保護者の署名で復職した。

市教委などによると、教諭は子供のころ、外見を理由にした嫌がらせを受け、
自殺まで考えたことがある体験から、常々いじめにつながる嫌がらせ行為には気を払っていた。


今月4日、教諭は体罰をした直後、自分で校長に報告。
校長室に向かう教諭に、ほとんどの児童が泣きながらついていき、
校長室の周りに座り込んでいたという。

保護者説明会で
「信頼している先生に残ってほしい、という子供たちの願いを強く感じた。辞めさせてはならない」
と保護者が結束し、署名運動を始める一方、校長あてに正直な思いを手紙につづった。

「(教諭の行動は)怒りの感情にまかせた行動ではなく、冷静な対処。自分の職をかけてでも矯正しようとしてくれた先生に感動し、涙がこぼれた」

児童も心境は同じだった。
「これからもぼくたちのたんにんをやってください」
「先生がいないと学校にいきたくない」
「ぼくのせいでこんなことになってごめんなさい」…。
全員が色紙に書いた寄せ書きには、素朴だが力強い言葉が並んだ。

謹慎後、教諭は反省文を提出した。
「『みんなを殴って先生は辞める』と言ったのは言葉の暴力だった」
「子供と話し込んだり先輩の先生と相談するべきだった」などと振り返り、
「いかなる処分も受けて、子供たちを立派に成長させ、卒業させる」と決意。
最後は「こんな素晴らしい教育環境の中で教師生活をさせていただくことに自信と誇りをもって頑張っていきます」
と締めくくられていた。

「体罰」は事前に警告
市教委などによると、男性教諭による体罰が起こったのは今月4日。
教諭のクラスでは1人の男児の外見を一部児童がからかい、他の児童も黙認する状態だった。
教諭は「(次にからかったら)みんなをたたいて教師を辞める」と注意していたが、
4日に再びからかいがあったため、「ここで放置すると、いじめに発展しかねない」と判断。
男性教諭はからかわれた男児を除く全員のほおを平手打ちした。

報告を受けた校長は同日夜、保護者らを集め、教諭とともに謝罪。
3日間の自宅謹慎を命じられた教諭は辞表を出した。

ところが、寛大な処分を求める署名運動が保護者の間で始まり、
全校の児童191人の保護者ほぼ全員分の署名が学校に提出された。
その後、教諭が二度と体罰をしない意思を示したため、校長は辞表を返却した。
教諭は採用4年目で、同小には今年度に着任していた。