母ちゃんの寝言

母ちゃんが重い乳癌だってわかった日。

いつも大イビキでけたたましく寝てる母ちゃんが、
その日は小さい声で
「おかあさ~ん…おかあさん…」って
泣きながら寝言を言ってた。

あぁそっか…母ちゃんも
おかあさんから生まれた女の子なんだって思って、
涙が止まらなかった。

怖いんだろな、淋しいんだよなって。
誰かにすがりつきたいんだなって。

とっくに孝行してもいい年齢になってからの
自分のムダ遣いとか暇な時間とか、
何でこの人にあげられなかったんだろうって
情けなくて胸の痛くなる声だった。

朝 起きてから
亡くなった婆ちゃんの写真の前で
「あなたの娘さんに迷惑いっぱいかけて御免なさい」って
泣きながら謝った。

自分がいつまでも子どもでいちゃいけないことに
やっと気付いた日だった。