俺の近所に住んでた爺さんの話

俺の近所に住んでた爺さんの話。

一人暮らしだった爺さんは子供好きで、ちっちゃい頃の俺もよく遊んでもらってた。

ある時、爺さんの家で見た暴れん坊将軍(だったと思う)の1シーンで
老中と主役が「じい」「若」と呼び合うのを二人で真似して

俺「じい!今日も遊びに来たぞ。」

爺「若、よくぞいらっしゃいました。」

なんて呼び合って遊んでいた。

そんな関係は俺が他県の大学に進学するまで延々と続いていた。

 

卒業後に実家に戻ってきたらなんと「じい」が脳卒中やって入院中だという。

さっそく見舞いに行ってみたら「じい」はたくさんの管に繋がれてベッドに横たわっていた。

看護士の話では外界からの刺激にはなんの反応も示さない状態だと言う。

俺は「じい」に呼びかけてみた。

「じい、俺だぞ。覚えてるか?」

ダメもとのつもりだった。・・・が、次の瞬間、閉じられていた「じい」の目がカッと見開き
そして今まで昏睡してたとは思えないようなハッキリとした声で喋った。

「若、ご立派になられましたな。」

もう意識が戻ることはないと聞かされていた俺、そしてソレを言った当の本人である看護士。

二人して悲鳴をあげるほどビックリした。付き添いで来ていたオカンなどは腰を抜かしたほどである。

直ちに医師が呼ばれ「じい」の意識回復の検査が行われたが、その頃には再び「じい」の目は閉じられていた。

そして結局、それっきり目覚めることのないまま半月後、「じい」は永遠の眠りについてしまったのだった。

 

後に医師から聞かされた話なのだが、「じい」が脳に負った障害は重く、そこから意識が回復した例は
聞いたことがない、というかまずあり得ないということであった。

だがあの場にいた俺は、オカンは、看護士は、確かにその《あり得ない事態》を見た。そして聞いたのだ。

「アンタに会うために目を覚ましたんだろうね。」 とは腰を抜かしてたオカンの談である。

 

そして「じい」の残してくれた言葉に恥じぬようになろうと心に誓ったものの
結局こんな時間から2chに入り浸ってるような、天国の「じい」に申し訳ない俺なのであった。