じいちゃんとばあちゃん

じいちゃんとばあちゃんは2人で暮らしてた。
ばあちゃんはボケが進んでた。
じいちゃんが介護してた。いろいろ大変だったみたいだけど、
会話はできているようで、人が思うほど大変じゃないよって言ってた。


ばあちゃんの家に行くと、いろんな事が紙に書かれていた。
「冷蔵庫は閉めましょう」「電気は消しましょう」「トイレは←」「ふく、くつした↓」とか、
いろんな字がじいちゃんの手で半紙に筆で書かれていた。
書いてあれば守ってくれるんだって。

じいちゃんはいつも一緒にいてあげたけど、どうしても区役所とか病院に
薬をもらいにとか出かける事があった。
心配だけど「外には出ないこと」と玄関に書いておけば、大人しく待っていて
くれたんだって。

ある日、じいちゃんが出かけた。
もちろん玄関には「外には出ないこと」と書いておいた。
それなのに、じいちゃんが戻ってきたら、ばあちゃんは家のすぐ前で車に
轢かれてしまっていた。救急車で運ばれた。
じいちゃんが駆けつけると、待っていたかのように、じいちゃんの手を強く
握って天国へ行った。
じいちゃんはとても悔やんだ。家族全員も悔しかった。
今まで書いてあることは必ず守ってたのに、なぜ家を出たんだろう。

家族同然の付き合いをしていた隣のおばちゃんが話をしてくれた。
事故の直前、急に雨が降ってきて、おばちゃんは布団を取り込みに庭に出た。
すると、ばあちゃんが傘を持って慌てて道路に出てったそうだ。
その時に事故にあった。

じいちゃんが勤めていた頃、ばあちゃんは雨が降ると必ず駅までじいちゃんを
迎えに行ってたそうだ。ちょっとでも雨が降ると必ず迎えに行ってたんだって。
雨を見て、じいちゃんが家に居なくて、傘を持っていこうとしたのだろう。

それだけ、じいちゃんが好きだった。
じいちゃんもばあちゃんが好きだった。

じいちゃんもしばらくして病気で天国へ行った。
ばあちゃんが持っていた傘と一緒にお墓に眠っている。
じいちゃん、ばあちゃん達は幸せだったんだろうな。