在日の親友との思い出

中学生の時、オレ達はいつも5人のグループで行動していた。
授業サボッて近くの港の防波堤の上で何時間もバカ話したり。5人の中に一人、在日出身者がいた。

カレは通名(日本名)を使っていたし みんな噂には知っていたけどあえて口には出さなかった。
オレ達にはそんなもん関係なかったし、それに「差別」ってモノを身近に感じた事が無かったから。
カレがどんな境遇にあり、どんな思いをしているのか理解できなかった。
だから今まで通りの親友の5人でずっといられるなら、それで十分だった。


そんなある日、確か卒業式の数日前のある夜の事だったと思う。その時に事件は起きた。
みんなで公園でダベッているところに高校生らしき数人が通りかかり
オレ達に向かってニヤニヤ笑いながら
「そいつのオヤジ、知っとるで お前チョンボ(蔑称)やろ、ここで何しとんじゃ!」こう言ってきた。
最初オレは頭が真っ白になって何が起きたのか訳が分からなかった。理解できなかった。
でも次の瞬間こんな言葉が浮かんだ。
コレガ サベツ トイウモノナノカ? コンナコトヲ イウヤツガ ホントウニイルノカ?
そう思った瞬間、その高校生達に掴みかかっていた。怒りが抑えられなかったから。
別の仲間もみんな叫びながらヤツらに突進していった。
このままコイツラに言われっぱなしでこの場をやり過ごしたらオレ達の今までの友情や思い出や大事なモノまで汚されてしまう、
奪われてしまう、きっと後悔する、きっと。
それから数年後一枚のハガキが。「子供が産まれたのでご報告します」と。
日本名は使わずに本名を使ってあった。アイツからだ。
ハガキには ・・自分は子供が産まれるにあたって本名を名乗るかどうか、とても悩んだ。

でもあの夜のこと、お前らのことを思い出すとそれがオレの背中を押してくれた。
オレはあの夜のことを一生忘れない。
オレ達の友情が最高に輝いてた夜・・オレもそう思うよ、
あの夜は、最低の夜だったけど、
最高にオレ達が輝いてた夜だったよ。